2003年9月号
<Contents>
窓
対談
日本の土木を歩く
金口木舌
建設の歴史散歩
雑記帖
フォトエッセイ
プロジェクト・ナウ
ダム風土記
今月の表紙
目次
落札率は談合の判断基準になりうるか
公共工事における落札率が注目されている。落札率は言うまでもなく、発注者が設定した予定価格に対する落札価格の比率を表すものだが、最近、この落札率を談合の有無の判断基準として捉えようとする考えが出始めているからだ。落札率が高いと、談合が行われたとみなすという意見である。
しかし、落札率が単純に談合の判断基準となるのだろうか。確かに、談合が行われれば、予定価格に近い金額で落札することが可能となるのは事実だが、この意見は予定価格の作成方法などをよく理解していない考えと言える。
予定価格は、予決令によって取引の実例価格、需給の状況、履行の難易、数量の多寡、履行期間の長短などを考慮して適正に定めなければならないと規定されており、その基本的な考えは、現場の条件に照らして、最も妥当性があると考えられる標準的な工法で施工するのに必要な価格と言われている。
このため、予定価格は工事一件ごとに異なり、しかも施工の効率化が図られ、安く仕上がると、以後に発注される工事ではそれが施工に反映されるように積算される。従って、低い落札率の工事があると、それを基準に積算されるので、以後の工事では低い予定価格が設定されるのが普通である。
入札はこのようにして設定された予定価格の範囲内で行われるので、標準工法等で積算された価格を企業努力によってどれだけ下回ることができるかの競争になるのである。技術力、経営力のある大手企業であれば大幅に予定価格を下回ることは可能かもしれないが、それでも適正な利益の確保を前提とすれば一〇%も下回ることは出来ないだろう。精算はそれほど甘くはない。
最近、公共工事の落札率が低下している。低価格調査制度の対象となる工事も増えている。落札率の低下は、一般競争や電子入札の導入など入札契約制度の改革に原因があるという見方もあるが、何といっても大きいのは、公共工事の減少である。需要の大幅減少から、競争が激化して落札率が低下しているのである。
従って、この落札率が正常な競争に基づく結果とは言えない。この異常な落札価格と比較して、落札率の高い工事の入札を談合と決めつけるのは、明らかに行き過ぎだ。予定価格から一〇%、二〇%も低い請負金額では、受注業者は多分赤字となるだろう。
前述のように予定価格は工事一件ごとに、しかも前の工事を基準に積算しているので、予定価格は引き下げられている。このため適正な競争が行われていれば、むしろ落札率は高くなるはずである。落札率が九五%を超えたら談合を疑えとの説があると言われるが、予定価格設定の方法を理解すれば、落札率を談合の判断基準とすることに無理のあることが自ずと分かるのではないか。
(瀬)
WWW を検索
dokokyo.or.jp を検索